支払先が個人の場合、その支払を「外注費」とするか「給与」とするかは迷うところです。税務上は、外注費にすれば消費税を計算する上で仕入税額控除ができますし、給与の場合のように社会保険料を負担したり年末調整を行ったりする必要がありません。
また、外注費は一般に出来高に応じて支払われますから、会社にとっては、外注費とする方が固定給がある給与より資金繰りの面でも有利といえるでしょう。
しかし、外注費にするか、給与にするかは勝手に決めて良いというものではなく、契約の内容や業務の実態によって判断しなければなりません。
1. まず、契約の内容について申しますと、
請負契約の場合 = 外注費
雇用契約の場合 = 給 与
と、区分することができます。「請負契約」というのは、会社がある仕事(サイトの作成など)を注文して、受注者がその仕事を完成させることによって対価が支払われる契約です。この場合、会社と受注者との間には主従関係や従属関係はありません。受注者は、とにかく仕事を完成させれば良いのですから、夜中に行おうと人を雇って行おうと自由です。
これに対して雇用契約は、勤務時間や仕事の仕方について、会社の指示に基づいて業務を行う契約です。会社と従業員との間には主従関係がありますから、従業員は、どのようなやり方でも仕事を完成させさえすれば良いというのではなく、あくまで会社の指揮監督に服して仕事を行う必要があります。
しかし、ご質問のようなケースでは会社と個人との間で契約書を交わさないことも多く、実際上、請負契約か雇用契約かが判然としないことが少なくありません。
2.そこで、次に業務の実態に基づいて、請負契約か雇用契約か、即ち外注費か給与かの判断をすることになります。その判断のために次のような基準をあげておきます。
判断基準 | 外注費 | 給与 |
業務の開始時間・終了時間、コアタイムなどが定められている。 | × | ◯ |
業務時間は個人の裁量で自由に決められる。 | ◯ | × |
支払金額が時間・日数・月などにより計算されている。 | × | ◯ |
支払額が出来高・成果により計算されている。 |
◯ | × |
会社に常駐して業務を行っている。 | × | ◯ |
業務を行う場所は個人の裁量で自由に決められる。 | ◯ | × |
その会社以外の業務を行うことができない(事実上できない場合を含む))。 | × | ◯ |
その会社以外の業務を行うことができる。 |
◯ | × |
業務の目的物に欠陥があった場合でも一定額の支払が行われる。 | × | ◯ |
業務の目的物に欠陥があった場合は支払が行われない。 | ◯ | × |
業務に必要な資材や工具を会社から提供されている。 | × | ◯ |
資材や工具は自前で調達している。 | ◯ | × |
しかし、現実には上記の基準では割り切れないケースがでてきます。
たとえば、風俗店のホステスなどは、風俗店に常駐していますが外注費として扱うことができます。
また、営業代行といって会社の営業活動を社外の個人に依頼することがありますが、その個人は会社に常駐せず、会社に拘束されないで独自に営業活動を行います。それにもかかわらず、その会社の名刺を持って営業活動を行っていたという理由で外注費を否認されて給与とされた例もあります。
なお、複数の基準に照らしてみると、一方の基準では外注費、他方の基準では給与となる場合も考えられます。
このように、外注費か給与かの判断は、必ずしも上記の基準だけで単純に割り切れるものではなく、個別事情に即して判断せざるを得ないのが現状です。
3.ところで、会社が外注費としていたものが税務調査で給与とされますと、
外注費の仕入税額控除を否認され、
所得税につき上乗せ源泉税を徴収される
ことになり、税務上のダメージを受けることになります。
そこで会社としては、判断に迷うときはできれば外注費としたいところですが、税務調査に備えて次のような対策を立てておくことも有効でしょう。
① 常駐している場合には、個人は会社の施設(給排水・電気設備など)を使うわけですから、その分の実費を徴収します。
実費は支払額から差引けば良いでしょう。上記のホステスの場合はこの方法によっている例が多いようです。
② 個人から取引の都度請求書を発行してもらいます。請求書には、業務の結果得られた目的物や成果を個別に記載します。
③ 個人に屋号を付けて、屋号の記載された名刺を所持してもらいます。請求書も屋号付きで発行してもらいます。
少し古い資料ですが、外注費か給与かで争われた国税不服審判所の裁決例がありますからご参考になさってください。
2012.12.17