◆ 税務調査は「拒否」できるか? ◆
いかがお過ごしでしょうか。深まりゆく秋、あの猛暑がなぜか懐かしくさえ感じられます。
さて、今回は税務調査についてです。 税務署の調査官は招かれざる客。できれば顔を合わせないですませたいもの。
ところで、税務調査は果たして拒否できるのでしょうか?
毎年7月上旬に国税庁の人事異動が行われるため、異動後の8月から翌年の6月頃までの間に、多くの税務調査が行われます。特に9月~11月は、3月決算法人の税務調査が集中するため、この時期はまさに税務調査のラッシュアワーです。
さて、税務調査は大きく「任意調査」と「強制調査」とに分けられますが、大半の税務調査は任意調査で、納税者の同意の下に行われます。任意調査である以上、決して強制的に行われるものではありません。
ところで、「任意」であるという理由で、果たしてこれを拒否することはできるのでしょうか。
任意調査は、調査官が「質問調査権」に基づいて行うものですが、納税者はこれに対して「受忍義務」を負う、とされています。仮に、任意調査を拒否した場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
したがって、任意調査といっても拒否はできないのですが、これまでのところ、この罰則が適用された例は稀で、実際は青色申告取消しと推計課税による徴税という、「罰金」ではなく「税金」による制裁が行われます。
ところで、任意調査を拒否することは、私たち納税者にとって得でしょうか?それとも損でしょうか?
仮に任意調査を拒否した場合、税務署がそれで退散することはなく、かえって調査官に不信感を抱かせ、態度を硬化させることは否めません。
任意調査は、90%以上が税理士等を通じて事前に予告されると言われており、「拒否」するよりも、「対策」を講じ「交渉」を行うことが、結果として追徴税額を少なく抑える効果を生むことになります。
令状なき査察とまで言われる、国税局資料調査課(通称リョウチョウ)の税務調査(リョウチョウの税務調査はあくまで任意調査です)でさえ、調査開始当初は強引なガサ入れ的手法によって行われるものの、納税者の対応次第では通常の「交渉」ベースに移行し、かえって短期間で税務調査が収束するケースも少なくありません。
もっともリョウチョウの税務調査が、かつての北村事件にみられるような違法性を、潜在的にせよ内包していることは念頭に置おくべきでしょう。
任意調査に対しては、「拒否して利を失う」よりも、「交渉により益を得る」という基本姿勢を常に心がけたいものです。
2010.11.10