税務署から税務調査の通知を受けた。任意調査だから拒否できるか。
拒否できない。拒否すると罰則が適用される。
税務調査の多くは「任意調査」である。これに対して不正な手段で故意に脱税を行った者に対しては、国税犯則取締法に基づき犯罪捜査に準ずる方法で税務調査を行い、検察官に告発することが行われる。これが査察制度である。
「任意調査」は、納税者の同意の下に、税務署等の職員が「質問検査権」に基づき、納税者に質問しその帳簿書類等を検査するものである(法法153)が、「任意」というのはこれを自由に拒否できるという意味ではなく、税務職員が実力を行使して強制的手段を採ることができないというに過ぎない。
任意調査を拒み、妨げ又は忌避した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる(法法162)。したがって、任意調査といえども拒否できるものではない。
任意調査を拒否できるのは、税務職員が身分証明書を提示しないなど特定の場合に限られる。
任意調査を拒否したり、妨げたりしても納税者にとって有利なことは何もない。かえって税務職員に不信感を抱かせ、対応を硬化させるだけである。「任意調査」は法人にあっては90%が税理士等を通して事前に通知されると言われており、現況調査(抜き打ち調査)は一般に言われているほど多くはない。
税務調査の通知を受けた場合は、拒否するのではなく対応を考えることである。税務職員と納税者との主張が異なるのは日常的なことであり、修正申告を求められた場合であっても、落ち着いて考えると打開策が見えてくることがある。
税務調査に対する日頃の準備と、税務職員に対して納税者の意見を冷静に主張する態度こそが肝要である。
上記の記述は、2012年4月5日現在の法令・通達等に基づいています。その後の税制改正や個別事情等により、異なる課税関係が生じる場合がありますのでご注意ください。
2012.4.5