売上の除外はどのように行われるのか。
売上の除外は、多くの場合脱税行為であるが、故意に行われるものから単純なミスまで多様なケースがある。
所得の隠蔽は重加算税の対象になる。
売上の除外には、次のような例がある。
1.飲食店等で行われる単純な売上除外
飲食店等で、売上伝票を除外して売上高を過少に計上する。レジを打つ者が一旦代金を入力してレシートを客に渡した後、即時データを抹消する場合もある。
たまたま2名の客が続いて同じ代金を支払う場合、売上を除外する者の心理として後に支払う客の売上を除外する傾向がある。2名の調査官が客に扮して同様の支払いをして不正を暴くこともある。
調査官の事前調査を警戒して、常連客の売上のみを除外して一見(いちげん)客の売上は除外しないなど不正な区別をしている場合もある。
このような売上除外は、経営者の意思で行われる場合と、従業員の不正行為に基づく場合とがあるが、いずれも重加算税の対象となる。
2.店舗ごと丸々行われる売上除外
都内に4店舗を有し風俗営業を行うA社は、売上を除外すると粗利益率が減少し不正が発覚することを警戒して、売上を除外すると同時に売上原価であるホステス報酬をも除外(両落とし)した。さらに高じて、4店舗のうち1店舗の損益をそっくり除外して法人税の申告を行った。この店舗は一時的に荒稼ぎをした後、事業年度末日までに計画的に閉鎖したが、税務調査で本社のメモに除外した店舗の電話番号があったことから不正が発覚し、修正申告を行うとともに重加算税を課された。
3.付随業務の売上除外
食料品の卸売業を営むB社は、特定の得意先との信用取引を主体としていたが、一部の商品については消費者に直接発送して代金を収入していた。B社は信用取引による売上高のみを収益として計上し、消費者直販の売上高については社長個人名義の預金口座に代金を振り込ませることにより、故意に売上を除外していた。
税務調査で、商品を発送した際の運送会社の請求書が発見され、不正が発覚し修正申告を行うとともに重加算税を課された。
4.法人成りに伴う売上除外
D氏は、従来個人で空調機器の卸売業を行っていたが、対外的な信用から会社を設立して法人として事業を行うことになった。会社設立以後の売上高は全て会社で収益計上したが、会社設立前1月間の売上高がたまたま個人事業で使っていた預金口座に入金されていた。
この売上高は会社の収益に計上されていなかったばかりか、個人の所得税の申告からも除外されていたため、結果として売上の除外とされた。
故意による売上除外ではないが、重加算税の対象とされた。
5.「締め後売上高」の計上洩れによる売上除外
事業年度が月末に終了する場合は、請求の締め日が20日だとすると、21日から月末までの出荷に対する売上高をその事業年度の売上高に算入する必要がある。請求書は20日締めで発行されるから、21日以降の売上高は納品書等から把握しなければならない。この作業を失念すると、締め後の売上高について売上除外となる。
税務調査でよく指摘を受けるケースであるが、故意でない限り重加算税が課されることはない。
売上を除外し、所得を隠蔽した場合、納税者は重加算税、延滞税等を負担することにより、多大な不利益を被る。また、不正の発覚を恐れる心理的な負担を思うと、不正による物心両面での損失は利得を大きく上回るものがある。
2011.11.19