社長から会社への貸付金が急に増加したことから、脱税が発覚したケースについて説明してほしい。
貸付金の出所を問われ、説明がつかなくなると脱税が発覚する。
保険代理店を経営するA社は、多数の保険外交員と契約し東京都内を中心に手広く営業を行なっていたが、既に解約した外交員を解約後もそのまま契約が継続しているように見せかけ、多額の架空外注費を計上していた。架空外注費は銀行振り込みの記録を残すために、一旦外交員本人の口座に振込み、一定期間経過後に社長の個人口座に返金させていた。その後A社は証券投資に失敗したため、社長は脱税により得た資金をやむを得ず会社に貸し付けた。
この結果、社長から会社への貸付金(会社から見れば借入金)が急増することになったため、税務調査で、貸付金の出所を問われることになった。
社長は、資金は「妻から借りた」、「亡父から相続した」などと不自然な説明を繰り返したが、妻に所得はなく、亡父の財産も確認できなかったため、調査官は社長に個人の預金通帳の提出を求めた。
社長は預金通帳の提出を拒否したが、金融機関に照会した結果、解約した外交員からの振込が多数確認されたため脱税が発覚し、過去5年間遡及して修正申告を行うとともに、多額の重加算税等を課された。
社長から会社への貸付は中小法人では日常的に行われており、会社では経理上「役員借入金」等という特別な勘定を用いて社長と会社との貸借関係を把握していることが多い。社長から会社へ資金を貸付けること自体は税務上問題はないが、税務調査では、貸付けた資金がどのようにして得られたものかを問われることがある。特に、調査対象事業年度において貸付金が急増している場合は不正を疑われることが多いため注意を要する。
2012.12.17