○5年6月30日に父が死亡したので、父の個人事業を承継した。父は毎年1200万円程度の課税売上高があったが、私はこれまで父から給料を支給されていたため事業を行っていない。したがって、私の基準期間の課税売上高は0円であるから、今年及び来年は消費税を納める義務がないと考えて良いか。
消費税を納める義務がある。
個人事業を法人化(法人成り)する場合などは、一般に会社設立後2年間は基準期間がないため、新設法人は消費税が免税になることが多い。
しかし、個人事業を相続により承継した場合は、税務上の扱いが法人成りの場合とは基本的に異なる。
1.相続があった年について
即ち、相続人自身の基準期間における課税売上高が1000万円以下であったり、質問のように基準期間において事業を行っていない場であっても、その相続があった年の基準期間の被相続人の課税売上高が1000万円を超えるときは、その相続があった年は、相続人について消費税の免税規定は適用されない(消法10条① )。
相続人
被相続人
上図では、相続人・被相続人ともに事業を行っている。相続人の課税期間○5年における基準期間は○3年である。
○3年の相続人自身の課税売上高は200万円であるが、被相続人の課税売上高が1200万円(>1000万円)であるため、相続人は、b+b´の期間において生じた課税売上高580万円に対する消費税を納付しなければならない。
仮に、被相続人の○3年の課税売上高が900万円であったとすると、被相続人の基準期間の課税売上高が1000万円以下になるから相続人は○5年において消費税は免税となる。この場合、相続人と被相続人の課税売上高の合計が 1100万円(200万円+900万円)となり1000万円を超えることになるが、被相続人自身の課税売上高が1000万円以下である限り、相続人について消費税は免税となる。
要するに、相続があった年においては、相続人または被相続人の基準期間の課税売上高のうちいずれかが1000万円超える場合にのみ、相続人は消費税を納める義務があることになる。
2.相続があった年の翌年・翌々年について
また、相続があった年の翌年または翌々年については、相続人の基準期間の課税売上高が1000万円以下である場合であっても、それぞれの年の基準期間における相続人の課税売上高と被相続人の課税売上高との合計額が1000万円を超えるときは、相続人について消費税の免税規定は適用されない(消法10条② )。
相続人
被相続人
上図で、○6年の基準期間は○4年である。○4年の被相続人の課税売上高は900万であるが、相続人の課税売上高200万円を加えると1100万円(>1000万円)となるから、相続人は○6年については消費税の納税義務がある。
また、○7年の基準期間は○5年であるが、この期間の被相続人の課税売上高と相続人の課税売上高との合計は
1000万円以下(a400万+b300万円+a´100万+b´80万=880万円≦1000万円)であるため、相続人は○7年については消費税を納付する義務はない。
上記の記述は、2013年7月10日現在の法令・通達等に基づいています。その後の税制改正や個別事情により、異なる課税関係が生じる場合がありますのでご注意ください。
2013.7.10