社長の妻に賞与(ボーナス)を支払ったら、調査官に「これは損金にならない」と言われた。役員に対する賞与が損金にならないのはわかる。しかし妻は役員ではない。調査官は「社長の妻は登記上役員ではなくても 役員とみなされる」と言ったが、反論できるか。
妻であるというだけの理由で、 役員とみなされることはない。しかし、妻が会社の経営に従事していると、登記上役員でなくても役員とみなされ、妻の賞与が損金にならない場合もある。
社長の妻が役員として登記されていない場合、妻に支払った賞与は、 原則的には通常の従業員に支給された賞与と同様に損金の額に算入される。しかし、税務では一定の条件を満たす妻が会社の経営に従事している場合には、役員として登記されていなくてもこれを役員とみなすこととしている (法法2十五)。したがって、この場合には妻に支給した賞与は損金の額に算入されない。
一般にオーナー企業の場合、妻が会社の経営に参加しているケースは多い。調査官はこの一般的なケースを念頭に置いて、妻に支給した賞与を役員賞与として損金の額に算入しないと主張したものと思われる。
しかし、妻が「会社の経営に従事している」か否かは個別事情に即して考えなければならない。妻が人事その他の会社の重要な意思決定に参加しておらず、その職歴等から判断して明らかに従業員としての業務にしか従事していない場合には、妻に対して支給した賞与は通常の従業員に対して支給した賞与と同じように損金の額に算入される。
もっとも、「経営に従事している」か否かの判定は実際の税務調査においても判断が難しい。したがって、妻の給与や勤務時間を通常の従業員と同程度にするなど、従業員としての勤務実態を客観的に説明できるようにしておく必要がある。
上記の記述は、2012年5月3日現在の法令・通達等に基づいています。その後の税制改正や個別事情等により、異なる課税関係が生じる場合がありますのでご注意ください。
2012.5.3