甲はアパート2棟を経営している。2棟は、それぞれ甲の有するA土地(500㎡・5,000万円)の上に建設されたものである。
このたび甲は、このA土地と建物を、乙の所有するB土地(300㎡・3,000万円)及び建物と交換することにした。双方の建物は等価であるが土地の価額が異なるため、甲はA土地を分筆しA´土地(300㎡・3,000万円)とA´´土地(200㎡・2,000万円)とした。
A´ 土地 300㎡ 3,000万円(甲所有)
A´´ 土地 200㎡ 2,000万円(甲所有)
B 土地 300㎡ 3,000万円(乙所有)
甲は、分筆後のA´土地と乙の所有するB土地とは等価であるからこれらを交換し、固定資産の交換の特例を適用して譲渡がなかったものした。一方、A´´土地については通常の売買として譲渡所得の申告を行った。
この場合、A´土地とB土地との交換について、交換の特例の適用が受けられるか。
交換の特例の適用は受けられない。
固定資産を交換した場合は原則として譲渡として扱われるが、下記の要件を満たす場合は譲渡がなかったものとされ、所得税が課税されない。これを固定資産の交換の特例という(所法58条参照)。
1.交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも固定資産であること(不動産業者等が販売のために所有し
ている土地などの棚卸資産は対象外)。
2.交換により譲渡する資産及び取得する資産は、土地と土地、建物と建物など同種類の資産であること。
3.交換により譲渡する資産は1年以上所有していた資産であること。
4.交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ、交換のために取得したのでは
ないこと。
5.交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同一の用途に供すること。
6.交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の
20%を以内であること。
甲は、その有するA土地を分筆して、分筆後のA´土地を等価である乙所有のB土地と交換したため、形式的には上記の要件を満たすものの、実態として、甲は A´´ 土地を含めて、分筆前のA土地全体を交換をしたものとされるため、A´´土地の売却代金を交換差金として、交換の特例の適否を判定する(基通58-9)。
即ち、A土地(A´土地+A´´土地)の価額 = 5,000万円 ①
B土地 = 3,000万円 ②
①-②= 2,000万円 > 5,000万円×20%=1,000万円
したがって、上記要件のうち6.を満たさないため、交換の特例は適用されない。
ただし、甲の有する建物2棟のうち1棟が、賃借人の特殊事情により立ち退きが行われず、やむを得ずA土地を分筆して交換し、特殊事情が収束した後に残地を売却した場合などは、その実態に即して交換の特例の適用が認められるものと思われる。
(*) 相続又は贈与により取得した財産については、被相続人又は贈与者の取得時期を引き継いで年数を計算する。
上記の記述は、2012年1月10日現在の法令・通達等に基づいています。その後の税制改正や個別事情により、異なる課税関係が生じる場合がありますのでご注意ください。
2012.1.10