個人で物品販売業を行っていたが、このたび会社組織にして営業を続けたい。法人成りすることのメリットとデメリットについて教えて欲しい。
税務上節税効果が期待できる反面、法人設立や設立後の事務コストの負担が増加する。
法人成りのメリットとデメリットは次のとおりである。
-法人成りのメリット-
1 |
個人より会社組織で業務を行うことの方が、仕入先や販売先の信用を得やすい。 取引先が個人事業者と取 引をしないため、やむを得ず法人成りするケースもある。 |
2 |
いわゆるSOHOのような事業形態では、経費の負担が少ないため収入がさほど大きくなくても比較的多額 の利益が算出されることがある。 このような場合、法人成りして事業主を取締役として給与を支給すれば、個人事業であれば事業所得であったものを、結果として給与所得に置き換えることができる。 給与所得は給与所得控除の適用を受けることができるため、法人・個人トータルで見ると節税効果が現れる。 |
3 |
個人事業では所得は全て一人の事業主に帰属する。 法人として事業を行えば、事業主の親族等に給与を 支給することができ、結果として所得が分散するため節税効果が得られる。 |
-法人成りのデメリット-
1 |
株式会社を設立する場合、定款の認証と登記申請で最低でも20万円のコストを要する。 会社設立後損金の額に算入できるとは言え、開業初期費用の負担は大きい。 |
2 |
個人の場合、青色申告をしていなければ所得税法上の特典は受けられないが、事務負担は極めて少ない。 また、青色申告であっても個人事業である限り事務負担は大きくはない。 対して、法人の場合は、確定申告書に添付する書類の量だけを見ても個人の場合と比して多く、その分事務負担は大きい。 |
3 |
法人の取締役には任期がある。任期が到来すると取締役は退任するから、新たに取締役を選任する必要がある。 従来の取締役がそのまま重任する場合でも同様である。 取締役の変更登記には1万円の登録免許税が必要になる。 取締役の任期は、一定条件の下に最長10年までと決議することができる。監査役についても同様である。 |
以上の利害得失をよく考えて法人成りを選択して欲しい。
上記の記述は、2011年11月1日現在の法令・通達等に基づいています。その後の税制改正や個別事情等により、異なる課税関係が生じる場合がありますのでご注意ください。
2012.11.1