平成25年1月から施行される復興特別所得税制度は、給料や報酬ばかりでなく、利子や配当などにも適用されます。預金の利子について見ると、平成24年までは15%の所得税と5%の住民税が源泉徴収されていましたが、平成25年1月からは、これらに加えて、所得税の2.1%の復興特別所得税が新たに付加 されることになります。
1.利子や配当に対する復興特別所得税の税率
利子や配当に対する復興特別所得税は所得税の2.1%ですが、基になる所得税の税率は、利子・配当などの種類によって異なります。したがって、これらに対する復興特別所得税の税率も、利子や配当などの種類によって異なってきます。具体的な復興特別所得税の税率は次の表のとおりです。
尚、平成28年1月以後、法人が支払いを受ける預金の利子等から差引かれる住民税利子割が廃止されています。詳しくはこちらをご覧ください。
所得税・復興特別所得税等の税率
税 率 | 平成24年12月まで |
平成25年1月~ 平成25年12月 |
平成26年1月 ~平成49年12月 |
|
預金・公社債の利子 | 全体の税率 | 20% | 20.315% | |
所得税 | 15% | 15% | ||
住民税 | 5% | 5% | ||
復興特別所得税 | - | 0.315% | ||
上場株式・公募投資信の配当・譲渡益 | 全体の税率 | 10% | 10.147% | 20.315% |
所得税 | 7% | 7% | 15% | |
住民税 | ( 3% ) | ( 3% ) | ( 5% ) | |
復興特別所得税 | - | 0.147% | 0.315% | |
非上場株・出資金の配当 | 全体の税率 | 20% | 20.420% | |
所得税 | 20% | 20% | ||
住民税 | - | - | ||
復興特別所得税 | - | 0.420% |
* ( )は上場株式等の配当にかかる住民税の税率で個人に適用されます。法人に対しては地方税法に規定がないため課税されません。
* 税率は平成25年3月25日現在の情報に基づいています。
2.預金利子等の手取り額から逆算して復興特別所得税を求める方法は?
平成25年1月1日以後支払いを受ける預金や公社債の利子からは、復興特別所得税が差引かれます。
定期預金や公社債の利子は、銀行などが発行する計算書から復興特別所得税の額を知ることができます。
ところが、普通預金の利子などについては、利子の手取り額を割り返して所得税や住民税の額を求めるという簡便的な方法をとるのが一般的です。
平成24年までは、利子の手取り額を0.8で割り返して求めた額に0.15を乗じて所得税の額を計算し、また0.05を乗じて住民税の額を計算していました。
平成25年以降は、割り返す数値が 0.8 → 0.79685 に変ります。
復興特別所得税適用前(平成24年まで)
手取り額 500円
利子の総額 500円 ÷ 0.8 = 625円 1円未満切捨て
所得税(国 税) 625円 × 0.15 = 93円 1円未満切捨て
住民税(地方税 625円 × 0.05 = 31円 1円未満切捨て
復興特別所得税適用後(平成25年から平成49年まで)
手取り額 500円
利子の総額 500円 ÷ 0.79685 = 627円 1円未満切捨て
所得税+復興特別所得税 627円 × 0.15315 = 96円 1円未満切捨て
復興特別所得税 * 96円 × 0.315/15.315 = 2円 50銭以下切捨て、50銭超切り上げ
所得税(国 税) 96円 - 2円 = 94円
住民税(地方税) 627円 × 0.05 = 31円 円未満切捨て
● 上記の計算の結果として、利子の手取り額が130円以下の場合は、復興特別所得税は0円になります。
このように、平成25年以降は、平成24年までと比べる計算方法がかなり複雑になります。
普通預金の利子にかかる所得税と復興特別所得税は、上記算式中の*のように按分計算をするのが原則ですが、平成25年1月以降に支払いを受ける利子については、所得税と復興特別所得税とを期末に一括して按分する方法も認められています。また、合理的な方法であれば、その他の方法で按分計算と端数処理を行ってもよいことになっています。
3.配当の手取り額から逆算して復興特別所得税を求める方法は?
平成25年1月1日以後効力が発生する配当等からは、復興特別所得税が差引かれます。
利子の場合と同じように、配当についても、手取り額から所得税と復興特別所得税を逆算して求めることができます。法人が受け取る株式等の配当は、利子の場合とは異なり住民税が課税されませんから、利子に比べて幾分簡単に復興特別所得税が計算できます。
① 法人が受け取る上場株式等の配当等の場合
復興特別所得税適用後(平成25年中)
手取り額 500円
配当の総額 500円 ÷ 0.92853 = 538円 1円未満切捨て
所得税+復興特別所得税 538円 × 0.07147 = 38円 1円未満切捨て
復興特別所得税 38円 × 0.147/7.147 = 1円 50銭以下切捨て、50銭超切り上げ
所得税(国 税) 38円 -1円 = 37円
復興特別所得税適用後(平成26年から平成49年まで)
手取り額 500円
配当の総額 500円 ÷ 0.84685 = 590円 1円未満切捨て
所得税+復興特別所得税 590円 × 0.15315 = 90円 1円未満切捨て
復興特別所得税 90円 × 0.315/ 15.315=2円 50銭以下切捨て、50銭超切り上げ
所得税(国 税) 90円 - 2円 = 88円
② 非上場株式等の配当等の場合
復興特別所得税適用後(平成25年から平成49年まで)
手取り額 500円
配当の総額 500円 ÷ 0.7958 = 628円 1円未満切捨て
所得税+復興特別所得税 628円 × 0.2042 = 128円 1円未満切捨て
復興特別所得税 128円 × 0.42/20.42 = 3円 50銭以下切捨て、50銭超切り上げ
所得税(国 税) 128円 - 3円 = 125円
4.源泉徴収された復興特別所得税は、復興特別法人税から控除されます
法人の場合、利子や配当から源泉徴収された復興特別所得税は復興特別法人税から控除されます。これは、利子や配当にかかる所得税が法人税から控除されるのと同じしくみです。
復興特別法人税の申告は、法人税とは別の申告書で行います。それぞれの申告書を見比べてみると、復興特別所得税を復興特別法人税から控除するしくみがよくわかります。
法人税申告書別表六(一)に当たるものが復興特別法人税別表二で、この別表で復興特別所得税の控除額の計算を行います。
5.わかり易い復興特別所得税の経理の仕方は
平成25年以後の源泉所得税・復興特別所得税の計算がいかに煩雑かご理解いただけたと思います。経理をできるだけわかり易くし、かつ、申告書の別表を簡単に作成するためにはどうすればよいでしょうか。
法人税申告書別表六(一)及び復興特別法人税別表(二)の記入箇所に合わせて、租税公課勘定に補助コードを付すのも一つの方法です。
(例) 租税公課勘定
補助コード1 利子にかかる所得税 → 法人税申告書別表六(一) 1の② へ
補助コード2 利子にかかる復興特別所得税 → 復興特別法人税別表二 1の② へ
補助コード3 利子にかかる住民税 → 法人住民税申告書第九の二号様式 1の②へ
補助コード4 配当にかかる所得税 → 法人税申告書別表六(一) 3の② へ
補助コード5 配当にかかる復興特別所得税 → 復興特別法人税別表二 3の② へ
*源泉徴収された復興特別所得税は、税額控除の他、損金の額に算入することもできます。これは源泉徴収された所得税と同じ扱いです。損金算入を選択した場合は、「復興特別法人税別表二」の記載は不要になりますが、この場合でも、実務上租税公課の金額を按分計算して、復興特別所得税の額を算出しなければならないことに変りはありません。
上記2.で述べたように、所得税と源泉所得税を期末に一括して按分する方法も認められていますが、この方法は所得税と復興特別所得税を一括して按分することを認めているだけで、住民税まで含めた全ての税目について期末で一括計算することを認めているわけではありません。
少し遠回りのようですが、租税公課勘定に補助コードを付けて、利子・配当を受け取る都度租税公課の内容を分解して会計ソフトに 入力するのが、経理をわかり易く行うための近道のように思われます。
2013.2.3