今回は、差し当って令和6年6月以後の給与支給時に必要な源泉徴収事務についてご案内いたします。
◆ はじめに
定額減税は、居住者(日本に住んでいる人)本人について3万円(この他に住民税1万円)、さらに同一生計
定額減税は、居住者(日本に住んでいる人)本人について3万円(この他に住民税1万円)、さらに同一生計
配偶者と扶養親族の人数に応じて所得税が減税される制度です。
◆ 定額減税は令和6年6月からスタート!
自営業者の方などの定額減税は、原則として令和6年分の確定申告(令和7年3月申告)で行われますが、サ
◆ 定額減税は令和6年6月からスタート!
自営業者の方などの定額減税は、原則として令和6年分の確定申告(令和7年3月申告)で行われますが、サ
ラリーマンの方の場合は、令和6年6月に支給する給与にかかる源泉所得税から実施されます。したがって、
会社の源泉徴収にかかわる担当の方は、令和6年6月の給与支給時に定額減税の事務を行っていただく必要が
あります。
◆ 基本的な考え方
令和6年6月の源泉徴収税額は、まず通常の(定額減税を考慮しない)源泉徴収税額から定額減税額を差し引
◆ 基本的な考え方
令和6年6月の源泉徴収税額は、まず通常の(定額減税を考慮しない)源泉徴収税額から定額減税額を差し引
いて計算します。こうして計算された税額を6月に支給する給与から源泉徴収します。
(例)
給与支給額 600,000円
通常の源泉徴収税額 47,100円 ①
定額減税額 30,000円 ②
差引手取り額 582,900円
*6月の給与から源泉徴収する金額は、17,100円(①-②)になります。
◆ 定額減税額を引き切れない場合
しかし、実際は上記のような単純なケースばかりではありません。
通常の源泉徴収税額が少額の場合は、通常の源泉徴収税額から定額減税額を引き切れないことも十分考えられ
(例)
給与支給額 600,000円
通常の源泉徴収税額 47,100円 ①
定額減税額 30,000円 ②
差引手取り額 582,900円
*6月の給与から源泉徴収する金額は、17,100円(①-②)になります。
◆ 定額減税額を引き切れない場合
しかし、実際は上記のような単純なケースばかりではありません。
通常の源泉徴収税額が少額の場合は、通常の源泉徴収税額から定額減税額を引き切れないことも十分考えられ
ます。
特に、パートの従業員など給与が少額で、しかも扶養親族が多い場合は上記の「引き切れない」金額が多額に
特に、パートの従業員など給与が少額で、しかも扶養親族が多い場合は上記の「引き切れない」金額が多額に
なるケースが考えられます。
(例)
給与支給額 200,000円
通常の源泉徴収税額 4,770円 ③
定額減税額 30,000円 ④
差引手取り額 200,000円
*③-④=-25,230円となり、この25,230円が「引き切れない」金額になります。
この場合は、源泉徴収税額は0円となりますから給与支給額200,000円がそっくり従業員の手取り額になり
(例)
給与支給額 200,000円
通常の源泉徴収税額 4,770円 ③
定額減税額 30,000円 ④
差引手取り額 200,000円
*③-④=-25,230円となり、この25,230円が「引き切れない」金額になります。
この場合は、源泉徴収税額は0円となりますから給与支給額200,000円がそっくり従業員の手取り額になり
ます。
ここまでは、従業員にとっては給与の手取り額が増えて、給与計算担当の方の事務処理も比較的簡単です。
◆ 引き切れない定額減税額をどうするのか
ところが、ここで厄介な問題が起こります。
この「引き切れない」金額はすぐに国から従業員に還付されるのではなく、7月以後に源泉徴収される税額か
ここまでは、従業員にとっては給与の手取り額が増えて、給与計算担当の方の事務処理も比較的簡単です。
◆ 引き切れない定額減税額をどうするのか
ところが、ここで厄介な問題が起こります。
この「引き切れない」金額はすぐに国から従業員に還付されるのではなく、7月以後に源泉徴収される税額か
ら順次毎月差し引いていかなければならないのです。
上記の例では、6月に引き切れなかった25,230円は、7月以後の通常の源泉所得税額から差しいていくことに
上記の例では、6月に引き切れなかった25,230円は、7月以後の通常の源泉所得税額から差しいていくことに
なります。
したがって、給与計算担当の方は、7月以後「引き切れない」金額がいくら残っているかを毎月計算し、毎月
したがって、給与計算担当の方は、7月以後「引き切れない」金額がいくら残っているかを毎月計算し、毎月
その残額を把握していなくてはなりません。
◆ 実際の事務はどうするのか
実務上は、「引き切れない」金額をどうやって把握するかがネックになります。
ベンダーの給与計算ソフトも、定額減税については年末調整での対応はしていても令和6年6月以後の毎月の
◆ 実際の事務はどうするのか
実務上は、「引き切れない」金額をどうやって把握するかがネックになります。
ベンダーの給与計算ソフトも、定額減税については年末調整での対応はしていても令和6年6月以後の毎月の
源泉徴収事務に対してはあまり対応していないようです。
したがって、現状では「引き切れない」金額の把握については国税庁が公表しているExcelシートを利用してみ
したがって、現状では「引き切れない」金額の把握については国税庁が公表しているExcelシートを利用してみ
てください。
◆ よくある質問
Q 当社は社員の数が多く6月支給の給与から定額減税に対応することは困難です。
したがって、各月の定額減税は行わず、年末調整で定額減税に対応しようと考えています。
定額減税によるメリットを先に取るか後から取るかだけの問題で、年間通してみればどちらでも同じこと
なので問題ないと思いますがどうでしょうか?
A 定額減税についての改正法令には、年末調整だけで対応してもよいという措置は 設けられていません。
A 定額減税についての改正法令には、年末調整だけで対応してもよいという措置は 設けられていません。
したがって、毎月の定額減税の事務はどうしても必要になります。
しかし、貴社のように社員の数が多い場合などは、毎月定額減税に対応することにより 相当の事務負担
しかし、貴社のように社員の数が多い場合などは、毎月定額減税に対応することにより 相当の事務負担
が発生することが予想されます。
また、6月から定額減税により社員の手取り額が増えても、その分年末調整で還付額が減少したのでは、
また、6月から定額減税により社員の手取り額が増えても、その分年末調整で還付額が減少したのでは、
制度の目的である「デフレ脱却」に対して心理的なマイナス効果をもたらすことにもなりかねません。
あくまで個人的な意見ですが、現実に即して、年末調整での対応も選択肢の一つではないかと考えます。
あくまで個人的な意見ですが、現実に即して、年末調整での対応も選択肢の一つではないかと考えます。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0023012-317.pdf